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<<月極駐車場>>

当時、私は住んでいたアパートメントの駐車場の空きがなかったので、
アパートから約ハーフブロックの所に パーキングスペースを確保していた。
 
そこは チャイニーズ系アメリカ人が
小さな一軒家と 周りのだだっ広いスペースを
月極駐車場として貸していた。
その駐車場には私の車以外に いつも5,6台は停まっていただろうか。 

しかし、駐車場とは名ばかりで
だだっ広い「庭」駐車場は 屋根も付いてなければ 
コンクリートで舗装してあるわけでもなく
フェンスで囲まれた、枯れた芝生の上に車を止めるだけ。指定された場所もなかった。
私はその庭に 1台分のスペースを借りていたのだ。


閃光 
1992年10月下旬のこと。
その日は 朝5時位から出かける仕事があったので、
まだ夜も明けきらず薄暗い中を いつもの様に駐車場へと歩いた。

そしていつも通り駐車場のフェンス門の鍵を 開けにかかった。
薄暗い中 鍵を差込んだ大型錠と極太のチェーンが出す「ガチャガチャ」
と言う音しか聞こえない。
それ以外 住宅街は物音一つしない。

突然!目も眩む様な強烈な光!!私の背後から…
ビックリして振り返ると
そこには 自動車のヘッドライトらしき物が 12,3個も。
一斉に私を照らし出している!!
と同時に 何人かが「手を上げろ!!」と口々に 怒鳴っている! 
私は 何が起こったのか確かめようとしたが
目が眩んでいて よく見えない。
何がなんだか 分からないまま手を頭の後ろで組んで 立ちすくんだ。
たくさんの銃口が私に向いていた。

すぐに 何人かの足音がして身柄を拘束された。
そこで初めて 自分が警官に取り囲まれていた事がわかった。
あの強烈な光の出所は 何台ものパトカーだったのだ。

私は パニック寸前…
鍵をガチャガチャ言わせてたので 泥棒と間違われたのか??
それなら 申し開きをしなくては…・
しかし どうして自分がこうなったのか 先ず聞かねばならない。
警官の声に負けないくらいの大声で
「私は泥棒ではない!!ここに月極めパーキングしてるんだ!!」
「何が理由なんだ!」「今から 仕事に行かなくちゃならないんだ!!」
思いつく限りの事を 一気にまくし立てた。
しかし 相手は警官、度を越すと何をされるかわからない。
相変わらず手は 頭の後ろだし焦りまくった。

そうこうしている間に 身体検査をされ
ポケットの中の物をすべて調べられた。
そして 警官は私に 住所と名前、国籍を聞いてきた。
財布の中に入っていた運転免許証の写真と実物を 見比べている様だ。

「おまえは 本当に 日本人か?」と聞いて来た。
私は ここぞとばかりに 
「本当に日本人だし ここからハーフブロックの所に住んでいて
 今 家には妻がいるから 確認してくれ。ここには 車を取りに来ただけだ」
と いった。
その間も警官達は 攻撃態勢を崩さない。


マフィア?キャング?
やがて 私の免許証を見て 警官の中の一人が  
「コイツは 日本人に間違いないだろう」と証明してくれた。
他の警官達は 彼がどうして 私の事を「日本人」だと断定したのかが
分からなかった様だった。私も 同じ思いだった。

彼が 他の警官達に断定理由を説明しているのを聞いていると
@ 彼は チャイニーズ系アメリカ人警官である。
A 日本と彼のルーツである中国は お互い使っている文字が似ていること。
B 持っていた印刷物には 漢字(チャイニーズキャラクター)以外の文字が
混じっている事。
C 日本に有りがちな名字のパターンを知っていること。
「yamamoto, hashimoto,などの 〜本」や「suzuki, tanaka,saito…」
  「〜田」「〜川」など…と言う事だった。
この説明で 他の警官達は納得したようだった。

彼のおかげで 私はようやく自由の身になったのだが
警官達からの謝罪の言葉は聞けなかった。

パトカーのヘッドライトも消され 
私は ようやく彼ら警官達と対等に話が出来るようになった。

私も仕事の時間が迫っていたし、あまり詳しくは聞かなかったが
ここに ハリコミをしていた理由を
かいつまんで説明すると
@ 私が借りていた 駐車場横の小さな一軒家が
チャイニーズギャングのアジトになっている。
A ギャングたちは そこで銃の密造をして資金を作っている。
というタレコミがあったらしい。

私は「チャイニーズギャング」に間違われ 警官に包囲されたのだ。
ビジネススーツを 着ていたにも拘らず。

その後 そこの家と月極めパーキング場が どうなったかと言うと
わたしが ギャングと間違われて逮捕されそうになった直後から
周りは ポリス関係者以外立ち入り禁止の 
黄色いビニールテープが張り巡らされ、駐車出来なくなった。
家の住人も逮捕されたのか 引っ越したのか 定かではないが
いなくなった。
そして私は 路上駐車をする破目となった。

私にとっては アジア系警官がいてくれてラッキーだったのだが
もし 彼が説得してくれなかったら…
そして もし彼自身が自分のバックグラウンドに関して無知だったら…・
と思うと ゾッとする。
誤認逮捕されてしまってからでは 時間、労力、経済 精神的全てに
大きなダメージを 受けていただろう。

いやはや 危機一髪 助かった。
アメリカ人には 中国人も韓国人も日本人も殆ど
いや、全く見分けが付かないらしい。
我々がヨーロッパ人の区別が付かないのと同じだ。

我々アジア人同士でも 外見だけでの区別は難しく、
喋って初めて判断できる事も 多々ある事を考えると
無理もないのかも知れない。



 
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